南国の隅っこ(新)

メキシコ南部の田舎町でカメとイグアナと犬と猫と鳥と暮らしてます。日々の記録。

イグリンコとお別れしました

 書かなきゃ……と思いながら、なかなか気持ちが落ち着かず、今日になりました。

 

 前にもチラッと書いたけど、イグリンコ、ずっと外のケージで触れ合いもなく、飼ってるんじゃなくて監禁してるだけなんでは……と思い始めていた。私が噛まれたときも、ダンナが怒ってイグリンコを捨てる!と言ってたけど、当時はイグリンコはべた慣れだったので、人間をあまり恐れず捕まって食べられちゃうんじゃないか、もしくは逆に、誰かに怪我をさせてしまう可能性もある、と考えると、それはやっぱりできなかった。

 でも外のケージを作るとほぼ同時に私の病気がわかって、留守にすることも増える、そのあいだに世話を頼む掃除のおばさんや近所の友人に何かあったら困るから、ちょうどよかった、とイグリンコをケージ住まいにさせて2年3か月。窓越しに視覚的なコンタクトはあったけど(イグリンコは私を見て威嚇することもあれば、まったく平気なこともあった)、物理的な接触はなし。ご飯をやるときも、あえて手から食べさせたりしないでいた。

 そしてイグリンコの行動は完全に野生のイグアナと変わらなくなったように見えたし(もちろん100%ではないとしても)、これならジャングルに返しても大丈夫かも? そうしたほうが、イグリンコには幸せなんだろうか。と考え始めた。

 けど、やっぱりもう6年半、一緒に過ごしてきて、いろんな思い出があって、そう簡単には思いきれないで、ぐずぐずと考えていたんですが。

 このブログにも、その決心を固めるための一歩として、そのことをチラッと書いたこともあった。そのすぐあとくらいだったと思う。決意を促してくれるようなことがあった。

 

 イグリンコに、ダニが付いていた。しかも、大量に。

 以下、ダニがついてるイグリンコの写真です。苦手な人は閲覧注意です。

 

 

 

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 私は、動物自体はまったく平気なんだけど、病変した組織とか、寄生虫とかは、ちょっと苦手。つぶれた虫とかも苦手。つぶれてないのは平気なんだけど。ダニは、ワンコでよく見てるし、そんなにえぐいものではないと思っていたけど、このびっしりとついたダニは……ぞわぞわしました。

 耳はほとんど覆われ、ほっぺにでかいの、そして顎下のクレストにも、写真では見えないけどデュラップにも点々と……。それに腕の関節部分や、肛門周りなど、皮が薄くて柔らかいところに集中的に。

 うわああああっ! いつからこんななってたんだ? 気付いた日の前の晩、もう真っ暗になってからイグリンコがケージのなかでドタバタしてる音がして、どうしたんだろう、と思ってた。翌朝、ふと見たら、気付いた次第。夜、じたばたしてたのは、ダニがかゆくてたまらなかったからか?

 窓際に来ているイグリンコに、金網越し3cmまで顔を近付けてダニであることを確認していたら、イグリンコ、まったく威嚇する気配もなく、私をおとなしい目でじっと見つめる……。これは、ダニを取ってくれと懇願する目か!?(´;ω;`)

 

 取ってやりたいが……どうすればいいんだろう。第一、こんなについてたら、貧血気味になってるかもだし、そもそもこんなにダニ大量発生するってのはイグリンコが体調悪いとか、栄養不良とか? だとしたらダニを取ってもジャングルに返すのはまずいんじゃ……。少なくともダニを取ったあと、しっかりご飯を食べさせて体力回復してからじゃないと……。

 などと考えながら、とにかくダニを駆除するのは一人じゃ無理、でも掃除のおばさんや友人に手伝ってもらって万が一怪我させたらいかんし、ダンナもこういうことにはさっぱり役に立たない人だし。獣医さんに頼むしかない。電話かけて事情を説明して、来てもらうことに。

 油をかけるとダニが口を離すから取りやすくなるというので、わざわざ植物油を買ってきた。うちで常備してるオリーブオイルは高いもん。あと、液状ハンドソープもいいらしいというので、それも念のため。ベビーオイルも効くらしいと友人が調べてくれたので、それも買っておこうと思ったけど、獣医さんが鉱物性の油はやめたほうがいいと言ってて、ベビーオイルは鉱物性だったので、パス。あと、ピンセットも各種あります。

 準備万端、獣医さんに来てもらったんだが、そのときはイグリンコ、知らない人がいっぱい部屋にどやどやと入ってきたからか、朝だったので日向ぼっこ中で動く気分じゃなかったのか、ご飯で釣ってもぜんぜん部屋に入ってこなくて、獣医さん帰っちゃった。

 午後になって、動き出して、いつもみたいに窓のあたりをうろうろし始めたので、菜っ葉を誘導コースに置いて、窓を開け、入ってくるのを待った。もっと、ためらいなく入ってくると思ってたけど、意外と慎重にゆっくりと、あたりを確かめながら入ってきた。

 

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 私がいると入ろうとしない感じだったので、部屋の奥のほうにしゃがみこんで様子を見ていた。完全に尻尾の先まで部屋に入ったところで、そうっと逆から近付いて窓を閉め、毛布をかぶせて捕獲。

 問題はここからで、ひとりでどうしよう? やっぱ、紐で簀巻きにするしかないよな。ごめんなイグリンコ。毛布の上から紐でくくってイグアナタコス状態になったイグリンコを置いて、獣医さんに電話。準備、整いました。

 少し別の用事をして、それと油を入れる小さめの入れ物とスポイト(シリンジ)、取ったダニを放り込むための入れ物に洗剤を溶かした水を用意して部屋に戻ると……イグリンコ、脱出してたw 完全にではなかったけど、毛布、ぐちゃぐちゃに巻いて、紐かけてたから、隙間があったんだな。しょうがないので捕獲やり直し。今度はきれいに巻いて、首回りと後ろ脚のすぐ手前を、きっちりと紐でくくった。

 獣医さんとこの助手が二名到着。巻いた毛布から出ている顔をまずチェック。スポイトで油をたらし、少し待ってからピンセットで。引っ張るだけでは取れなくて、ちょっとグルグル回すのがコツと、すぐに発見。3人がかりで、顔周辺、デュラップまでをきれいにした。イグリンコは、ずっとおとなしくしていた。噛もうと思えば噛めたのにね……。

 顔が終わって、さてどうしよう。小さいタオルを顔にかぶせて、ほっぺの出っ張り後ろで紐を巻き、体のほうを自由にした。腕、お腹、後ろ脚、すべてチェック。尻尾にはついてなかった。

 全部で、取れたダニはこんだけ。

 

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 白っぽくて大きいのがメス、黒っぽくて小さいのがオスだそうな。小さいのはまだそんなに血を吸ってないやつかと思ってたよ。

 最初は見るだけでぞわぞわしてたけど、取り始めたらもう夢中で、ピンセットなんかまだるっこしい! と私は指でぐりぐり回して取ってたw こんにゃろめ、こんにゃろめ、ダニだってそりゃ生き物なんだけど、やっぱりかわいいイグリンコをこんな目に遭わせるなんて許せん!!(`ε´)

 

 で、ダニ取りしながらイグリンコを2年ちょっとぶりに抱っこしたんだけど……。すげえわ、がっちり筋肉質で、ずっしり重い。こんだけダニに血を吸われてても、体力落ちてるとかなさそう。獣医さんの助手(一人は獣医免状持ち)も同じ意見で、このままジャングル返しても大丈夫でしょうと。

 裏庭とケージはダニ駆除の薬をたっぷりまき散らしてもらったので、イグリンコを戻すのもちょっと不安だし、生き延びたダニがまたついても困る。金曜の午後だったので、一晩だけどこかに収容して、明日(土)ジャングルに返そうと決心。

 どこにって、イグコのいる中庭くらいしかないけど(イグコにはダニまったくついてない)、どうしよう、と悩んだあげく(助手たちは、リードでつないでおけばと言ってたけど、中庭はいろいろものがあるから、リード長いと絡まって大変なことになりそう、短いと暴れて怪我しそう)、一晩だけだし、もう薄暗いからごめんよと、顔にタオルかぶせた状態で過ごしてもらった。うっすらは見えてるようで、しばらく中庭をごそごそ歩いていたが、そのうち諦めて寝てくれた。

 翌朝、10月6日(土)。イグリンコを毛布に包んで、車に乗せて、出かけた。

 

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 そうそう、抱っこしたついでに、前から気になってたクレストの皮もスポスポ、全部抜いた。きれいに抜けた。

 

 考えていた場所は、ここ。

 

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 赤い星付けたところ。中央下に見えているのは滑走路で、空港周りのジャングル。そして北側には川が流れている(黒くて、ジャングルと見分け付きにくいけど)。前に、イグアナやワニがいると写真を撮っていたところ。ここならイグアナがたくさんいるってことは、食べ物があるんだよね。縄張り争いとかあるかもしれないけど、イグリンコ頑張るんだ!

 川越しにはコンクリの絶壁になっているので、イグリンコを川に放り込んでも向こう岸まで行ってくれるかわからない。印をつけたところはここだけ、道路から少し芝生があって、そこから斜面を降りたかんじでジャングルへ入っていける。

 ちなみに、うちからはこんな距離。

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 青い星がうち。意外と近いけど、車だと、ぐる~~っと回っていくので結構な距離だった。途中でダンナが、ちょっと緑のあるところで「ここでいいんじゃないか?」って2回くらい言った。ダメ!! 道路が近すぎる、道に出て轢かれたらどうするんだ! と却下。

 とにかく目的地に着いて、イグリンコを抱っこして、斜面を降りていったら、小さな支流があった。といっても水はよどんで臭い……。そこらにゴミがいっぱい散らばってるし……。こんなところでいいのかな……と迷いはあったけど、これ以上迷ってたら別れられなくなる。毛布をほどいてイグリンコを支流の上に倒れている木の幹に載せ、頭からタオルを取った。

 ぼうっとした顔で硬直してるイグリンコ、動かない。ほら、向こう側に行くんだよ。自由だよ。と、ちょっと押してやったら、そこでパニックになって、ズザザザ!と走って水にドボン! あっという間に見えなくなった。

 しばらく、出てくるかなと見てたけど、蚊がすごかったし、イグアナは水中で40分だったか息止めてられるっていうし、仕方ないなと車に戻りました。もしかして、と思っていたような、後ろを振り返り振り返りジャングルの奥へ去っていく……なんてシーンはなかったw

 

 そのあと獣医さんに行って、ダニ取り援助の費用を支払い、帰り道、またあそこを通るので車停めてもらってもう一度見に行ったけど、イグリンコの姿も気配もなく。無事に奥のほうへ立ち去ったと思いたい。

 でも、ホント言うと、あそこに逃がしたのは失敗だったかも……。だって、あそこ通るたんびに、イグリンコいるかなあって見ちゃうじゃないか……(T_T)

 

 帰ってきたら、自分の部屋に入るたびに目に入る、がらーんとしたケージ。外が真っ暗になってからふと目をやると、まだ残ってる丸太がイグリンコの胴体に見えたりしてドキッとしたり。

 死なれたわけじゃなく、私の意志で、私の勝手な都合で、手放したんだからしょうがないんだけど……。こうして言葉にしてみると、もう動かしようのない事実なんだな(いや、書かなくても動かせないけど)と思えてきて、やっぱり心の半分くらいは(もっとかも)後悔してます……。

 でもイグリンコは、きっと外のほうが幸せに過ごせると信じるしかないよね。もともと、野生の子だったんだし。それでも6年半も私に付き合ってくれて、楽しい思いも大変な経験もいっぱいさせてもらった。それだけでも、有難いことだと感謝してます。

 イグリンコのあれこれにブログでお付き合いくださった皆さんにも、本当に感謝です。ありがとうございました。

 

 イグリンコの本名は、フジでした。ときどき噴火するからか、ってダンナには笑われたけどなッ!