南国の隅っこ(新)

メキシコ南部の田舎町でカメとイグアナと犬と猫と鳥と暮らしてます。日々の記録。

ワニは飼えるのか(実話を元にした小説)

 今日はちょっと変わった本を紹介。


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 簡単に言えば、ワニを飼っていた夫婦が、そのワニをフロリダに返そうとして旅をする話。作者は、映画『オクトーバー・スカイ』(邦題は『遠い空の向こうに』らしい)の人で、このワニの話は作者の両親の体験に基づく、ほぼ実話。まあけっこうハチャメチャロードノベルって感じで、どこまで本当だかはわからないんだけどね。


 そもそもこのワニ、ふたりが結婚したときに、妻の元ボーイフレンドが結婚祝いとして送ってくれたもの。靴箱に入れて送られてきたというからびっくりだよね。ま、うちの故ポチスケも靴下に突っ込まれて送られてきたけどさ。

 で、妻のエルシーはその元彼氏(ダンサーで俳優……の卵かな)のことが忘れられず、なぜか結婚しちゃった炭鉱夫の夫がイヤでイヤでたまらない。いやホント、なんで結婚しちゃったのかね? と思ってしまう展開。

 夫のホーマー(この本を書いた次男と同じ名前)のほうは、妻が溺愛するワニのアルバートがイヤでイヤでたまらない。ま、これはわかるわなー。たとえそのワニがどんなに人懐っこくて、いつもエヘラッと笑って、お腹撫でて〜、とひっくりかえって見せるようなヤツでもさ。


 いやあ、ちょっと待て、ワニってそんなに懐くの? そう言えばだいぶ前に中米のどこかで、怪我をしたワニを助けて手当てをした農夫がすっかり懐かれちゃって、庭の池でそのワニと戯れて泳いだり。それが有名になって見物人がいっぱい来るようになって、お金けっこう稼いだって話もあったなー。その稼いだお金はワニが食べる大量の鶏肉に使っちゃったんだろうけどね。

 なんかこんな描写を読んでると、むらむらむら……いかんいかん、イグリンコでさえ持て余してるのに、ワニなんてね、あはははは。


 でもまあ、読みながらどうしてもイグリンコと重ねちゃってねえ。いや、アルバートはとってもいい子で、夫のホーマーも旅をしながらだんだんアルバートを好きになっていくんだけど。でも最初は、「ぼくか、アルバートか」と妻に迫っちゃう。で、妻のエルシーは、アルバートを手放す決心をするけど、ただし条件がひとつ。アルバートを故郷のフロリダに連れていって、ちゃんと暮らせる場所を見つけること。うん、この点エルシーは偉いなと思いました。いや、私ならアルバート選んでたかもしれんw

 この時点では、やっぱ相手の都合も訊かずに生き物を、しかもワニなんてものを贈る元カレが非常識すぎるだろー、と思ってたんですが、ラストではこれがまた気持ちよく裏切られるというか。


 ネタバレになっちゃいますが、まあタイトルがすでにネタバレしてるからいいか。アルバートは結局やっぱりフロリダでお別れすることになるわけで。そのシーンは、もう涙なしには読めない……。エルシーだって、手放したくて別れるわけじゃないんだもんね。ましてやこんなにいい子だったら……何とかならないの!?って思っちゃう。

 その一方で、やっぱりイグリンコのこともいろいろ考えちゃった。今は、お互いに平和に暮らせる環境ではあるけど、でもこれって飼ってる意味あるのかなあ、とか。いつか、いずれはまた室内飼いにできればと思ってるけど、その目処は立たないし。正直、あんまり自信もない。猫も増えてるしなあ。

 考えられる可能性としては、引っ越して今より大きな家になったら、イグリンコだけ出入りできる部屋をひとつ作るか、庭にでっかいケージを作って、人間も出入りできるようにして、一対一で最初からやり直すパターンかな……。


 などとね、この本を読みながら思ってました。アルバート自体は、本のなかではそんなに活躍したり状況に関わってきたりするわけではなく(私の期待ほどには、多少はするけど)、でもその笑顔と甘えん坊ぶりは印象的。アメリカ人らしい(しかも1930年代の話だから古い)言動にちょっとイラッとするところもあったけど、話としても面白かったです。