南国の隅っこ(新)

メキシコ南部の田舎町でカメとイグアナと犬と猫と鳥と暮らしてます。日々の記録。

最初に飼った黒猫

 さて、ホニュ記事ばっかりついでに、昔ばなしもしておきますか。


 ニャンリンを飼うことにした最大の理由はやっぱり、実家の死んだ猫にそっくりさん、ってのが一番の理由で、二番目がダンナ。三番目に、私がそもそも黒猫好きってのがあったと思う。頭になんかつけてたのも、誰かが面白がってつけたのかも、と思ったのもある。


 で、私が子供のころ、犬もほしかったが猫もほしかった。そこらに捨てられた仔猫を見つけては拾って帰って、怒られてまた捨てに、てなことも何度もあった。でもなぜか、一軒家になってからも猫は却下され続けてた。

 ところが私が大学受験にひいこら言ってた高校生のころ、縁側で洗濯物を干してた母親のところに、ニャーン、と一匹の猫がやってきた(たしか……。そのあとやってきたポインターの仔犬とごっちゃにしてるかな?)。ちょうどその前日だったかに、私が目標のK大に入れたら猫飼ってもいい? と父親に取引wを持ち掛けてたとかだったと思う。で、なぜか母親もその猫を気に入った、んだったと思う。思うばっかりで申し訳ないけど、記憶がもう定かじゃないw

 んで、まだ大学受験は終わってなかったし、結局私はK大には受からなかったんだけどねー、父親がまたこのときに限って、条件を満たす前に猫を飼うことを承知しちゃった。このときに限って、私は一言も、この猫飼いたい、とは言わなかった気がするw


 その猫だが、まだ一歳にならない若い猫だったと思う(当時、獣医さんに連れていくとかいう発想がなかったから適当な推測だけど)。まっ黒で、お腹にちょっとだけ白い部分があった。ニャンリンにも、実はお腹に白いところがある。まあニャンリンはそれ以外にも全身に単発で白い毛が混じってるところが、そのあと(私が家を出てだいぶ経ってから)やってきた、去年死んだ黒猫とは同じだけど、この最初の黒猫とは違うところだけど。

 それと、この黒猫、確か左前足だったと思うけど、右だったかもしれない、大きな傷があった。うちに来たときは、その傷はもうきれいに治ってて、白い皮膚になってたんだけど、そこはその後もずっと毛が生えず、禿げたまんまだった。その後の怪我も治れば毛が生えそろったから、どんだけひどい傷だったのか……?

 ニャンリンも頭禿げてるしねー。でもこれは、すぐに生えかわって消えるとは思うけど、この昔の猫を思い出させた一因ではある。あ、ちなみに、性別はオスだったけど。


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 これがその猫。腕のあたりに白っぽく見えてるのが、その禿げた箇所かなあ。だったら右腕だったのかもしれない。こうして見るとけっこうでかく見えるなあ。私がまだ高校生で、まだ細かったってのもあるか。


 この猫、野良生活がそこそこ長かったからか、夕食のテーブルからサンマを盗んで走ったこともあった。そんなことしなくても、ちゃんと自分のご飯はもらえるとわかるまで、少しかかった。

 私の膝で丸くなって寝てても、目が覚めた瞬間、自分がどこにいるのかわからなかったんだろうねえ、いきなり私の手にガブガブと噛みついたことも二、三回あった。抵抗しないでじっとしてると、噛みついた体勢のまま、あれ?って感じになって、ああそうか、と悟ると、それまで噛んでた手をペロペロ舐めてくれたりもした。

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 お正月らしい家族写真に、一緒に写ってるけど、抱いてる父親が黒い服着てるから、何が何だかw

 オス猫だったし、当時は完全室内飼いなんて概念は(田舎でもあったので)知らなくて、当然のように毎晩パトロールに出かけてた。近所に白黒のでっかいオス猫がいて、そいつがこの辺のボス猫らしく、うちの黒猫をよくイジメてた。「あー、またあのシロクロが来てる! 憎たらしいなー」という台詞が当時、うちの家族の合言葉?みたいに頻繁だった気がする。

 夜のパトロールから帰ってきたうちの黒猫、たぶんシロクロと遭遇しないで済んだ夜は、ニャンニャンニャン! と得意そうにしゃべりながら家に入ってきた。無言で、尻尾だけピーンと立てて帰宅する日は、こっちも察して何も訊かずにいてやったw


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 私が抱っこして、弟も一緒になってかわいがってるところ。


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 シリーズで三枚。これで、この黒猫の写真は全部だったかなー。


 当時のうちは洗面所に勝手口があって、黒猫はだいたいそこから出入りしてた(人間がその都度開閉してた。帰ってきたときは台所の窓から覗き込んで知らせた)。

 あるとき、出るのー出ないのー、好きにして、と勝手口を開けっ放しにして、うずくまって外を見てる黒猫を放置してたら、そのすぐ外に例のシロクロが来て、両者が、ヴーーーーーーーー、と唸り合戦をやってた。母親と弟と三人で、うわ、見て、あんなとこまで来て喧嘩売ってる、あのシロクロ、ほんま憎たらしいなー、どうする? と相談の末、何ができるかわからんけど、ちょっと行ってみるわ、と私がうちの黒猫の背後に近付いたら……

 それまではシロクロのほうが断然強気で唸ってたのに、虎の威を借りたうちの黒猫の声が一気に大きくなったwww そしてシロクロは逃げ去った! 

 猫の喧嘩に介入すると人間が痛い目を見る、ってのは、メキシコで経験したことあるけど、この場合は役に立ったんだねえ。まあ母親と弟と三人、黒猫の強気に笑い転げたけどね、あんまりわかりやすすぎて。


 でも一度、耳の後ろにひどい傷を負って帰ってきたことがあった。母親が段ボールで寝床を作ってやって、毎日軟膏を塗り、包帯を巻いて手当てをしてた。けど、膿んで腫れあがって、熱があって息も苦しい感じで、どうなることかと思ってた(それでも獣医に連れていくって発想はなかった……)。で、二週間ほど経ったある日だったと思う、いきなり頭をブルブルと振ったら、膿で腫れあがってた部分の皮が破れて、ものすごい臭気の膿が和室いっぱいに飛び散ったー! 

 そのあとの掃除をした母親は大変だったと思うけど、猫はそれですっきり、治っちゃった。しかもそんなひどいことになった傷も、あとはちゃんと毛が生えそろったので、禿げた腕の傷はどんなに深かったんだろうと、ますますうちのみんなで黒猫のひどかったろう子供時代を想像しては甘やかしてたわけですがw


 結局この黒猫は一年ほどうちにいた。最後のころにはもうすっかり我が家の一員って顔で、弟の膝に乗って、どすん、ともたれかかるように寝転んだりする様子をものすごくよく覚えてる。そんな寛ぎようを見せるようになって、あの最初のころの、目が覚めたらガブガブしてたのと同じ猫とは思えないくらい落ち着いてよかったねー、とみんなで言ってた。

 で、ある日、帰ってこなかった。まあオスだから一晩くらい……と言いつつ心配して、次の晩もその次の日も帰ってこなくて……。毎日毎日、今日こそは、と思いながら、じわじわと諦めのほうが大きくなっていく。だから、結局この黒猫のために泣くこともなかった(今書いてたらちょっと泣けてきたw)。


 帰ってこなくなって一年以上経って、電車で10分の距離にある大学で生物学をやってたころ、実験室の窓からふと外を見たら、黒猫が歩いてたことがあった。ちょっとごめん、と実験を放り出して駆け下りていって、その黒猫に声をかけて名前を呼んだら、振り向いて駆け寄ってきた。けど、私も猫も同時に気付いた。猫・人違いでした。同時に気付いて、両方、はたと足を止めて、がっくり。猫のほうは私を誰と勘違いしたんだろうか……。

 それからしばらく、他にも数匹いた猫たち、大学構内でいつも生物学科のみんなでかわいがって餌をやったりもしてたけど、ある日みんな一斉に姿を消してた。苦情が出て処分しました、って……。私が猫違いした黒猫も。


 でもそんな感じで、ずいぶん長いこと(もしかしたら日本を出るまで、って2年ほどしかなかったしね)黒猫を見るたびに、ドキッとしてうちの子じゃないかと思い続けた、あのころの癖が未だに残ってるのかもしれないねえ。黒猫には今でも惹かれてしまいます。