南国の隅っこ(新)

メキシコ南部の田舎町でカメとイグアナと犬と猫と鳥と暮らしてます。日々の記録。

リードを伝わってくるもの

 今日もイグリンコネタがあることはあるんだけど、さすがにマンネリになってきたのと、写真もいまいちいいのが撮れなかったので、久し振りに昔ばなしの続きを。


 前のワンコ(秋田犬メス)で苦労して、でもある日、引っ張ってるのは私のほうじゃないか? と気付いた話は前に書いたけど。

 最近はそうでもないけど、あのころはワンコをリードつけて散歩させてたら、なんでつないでるのかわいそうに、放してやりなよー、とか言ってくるメキシコ人はけっこういた。いやいや、この子ちょっと問題児だから、って言っても、大丈夫だよー、って大丈夫じゃなかったら責任取ってくれるんかおんどりゃー! って言いたくなることも何度か。あと、ウンチ拾ってても、なんでそんなことするの? ってその前の家の人に言われたりね。でも誉めてくれる人のほうが多かったし、15年も経った今ではこの田舎町でもウンチを拾う人はちらほらいるようになった。こっそり自慢だけど、元祖は私たちだと思うw

 とにかく、リード=犬の自由を奪うもの、って考えは今でもあるんじゃないかな。近所に犬を放し飼いにして、二回も車に轢かれて死なせた家があるんだけど、今でも(3匹目の犬を)放し飼いにしている。一匹目は当時のうちのワンコ(ほとんどの犬から嫌われてた)にも臆することなくじゃれついて遊んでくれる小さいワンコで、すごくかわいかった。車に脊椎をやられて下半身不随になったと聞いて、手術代ならうちで出してもいいよね、とまで言って話を聞いてみたけど、結局安楽死させられてしまった。なんでこの飼い主は学習しないのか!!?? と正直言ってイライラするけど、やっぱりそこまで口出しできないしね。今の3匹目も、ちょっと前に帰ってこなくなって、見なかった?と訊かれた。幸いそのときは戻ってきたようだけど、いつ何があってもおかしくない。でも、犬に対する接し方、気持ちは人それぞれだからなー……。向こうにしてみたら、うちはいつも犬を縛り付けて閉じ込めて虐待してるみたいなもんだ、と思ってるかもしれない。


 ところで、私は霊感とかまーーーったくないほうで。幽霊とかオカルト話は面白いとは思うけど、むしろそういうものを考え出す人間の心理とかが面白いような気がする。予感とかテレパシーとか、実際にあるとしても偶然で、そういうのが起こらないときのほうが多いけど、起こらないから気付かない(意識しない)だけだろ、とか思うタイプ。一応、理系ですし。

 だから、こんなことも本当は非科学的だと自分でも思うんだけど、でも実際に起こるんだから私にとっては事実なのだ。

 つまり、ワンコと散歩中にリードを通じてワンコのドキドキが伝わってくる、っていうw 今のワンコはのんびりさんだから、そんなにドキドキすることはないんだけど、前のワンコは気が強いわりに神経質なところもあって、普段と違うものに対して警戒心がかなりあった。前にも書いたように、散歩のとき、私は一瞬も気を緩めず周囲に視線を巡らせ、ってなことをしていたから、感覚がそれによって研ぎ澄まされたのか!?

 たとえばある晩、普通に近所を散歩していて、急に胸がドキドキしてきた。え、何だろう、と思ってから気がついたらワンコが立ち止ってる。硬直して道の先の一点を見つめている。そこを見ると、大きな黒いゴミ袋が口を縛られて道端に置いてあって、その縛ったところより上が風にゆーらゆーらと揺れていた。暗かったし、何を詰めたのか(たぶん落ち葉とか)ぼってりと膨らんだ胴体と、その上で首を振っているそれは、確かになんか不気味な動物に見えたw なーんだ、あれにドキドキしてたのか(ワンコが)、と思ったのが、ドキドキの伝染を初めて認識したとき。

 初めてのクリスマスの時期(だからワンコは1歳になるちょっと前)にも、近所の家の前庭にワンコと等身大くらいの籐で編んだトナカイがピカピカ電球をいっぱいつけて飾られていたときも、昨日まではそんなものなかったので、ワンコがドキドキ緊張してフリーズ。それも伝わってきた。

 信じてもらえるかどうかわからないけど、ワンコが緊張していることに気付く前に私もドキドキしてる、これホント。で、あれ? とワンコを見ると、そっちが、というパターン。自分は、意識しては何に対しても恐怖も不安も感じてないのに、心臓だけがドキドキするって不思議な感覚だった。まあわかってからは、ああワンコかー、くらいに思うようになっちゃったけど。


 そういうこともあって、リードってのは犬を縛り付けて自由を奪うものではないと思うわけです。逆に、ワンコにも私の緊張やドキドキが伝わるんだろうか? それはワンコに訊けないからわからないけど、前のワンコがそんなふうに緊張して私までドキドキしちゃったときは、その原因を見て、危ないものとかでなければ(ていうか危ないものだったことは幸い一度もなかったけどw)、私がまず心臓を落ち着けて、それが伝わればいいなと思いながら声をかけてワンコを促す。まあたいていそれで納得して、また歩いてくれた。


 そして、ドッグショーに出るわけでなし、脚側歩行なんかに拘らなくても、と割り切ってリードを緩めてからは、リードの使い道がさらに増えた。前のワンコのときは、普段は通常の太いしっかりしたリードとチョークチェーンを使ってた。ジェントルリーダーなるものも当時、日本ではすでにある程度出回ってたようだったけど、こんなメキシコの田舎町ではなかったし。チョークチェーンも、ちゃんとした使い方で(首じゃなく顎下にかけるやり方で)歩かせることはいちおう習得はしたけど、まあそれもやらなくなった。それなら普通の首輪でもよかったんだけど、ワンコ自身がチェーンを自分のものとすでに認識していたので、そのまま一生使ったなー。

 で、あくまで私流のリードの使い方なんだけど。

 周囲に人や犬や車がいない場合に限り、リードの届く範囲では自由に歩かせる。何かの匂いを嗅ぎ始めたら、引っ張らないぎりぎりまでリードを張って、いざというときはすぐに引っ張ったのが伝わる状態に。

 あるいはそこ境界線ね(人の家の敷地とか)ってところに入るときは、張っているのが伝わる程度にリードを引いた状態に。それ以上行こうとしたら抵抗がかかるように。

 もう行くよ、ってときはリードを揺らして促す。ダメ(拾い食いとか)!と言うときは強めに引っ張る。


 普通の使い方なのかもしれないけど、少なくとも私はどこでも誰からも、こういうことは教わらなかった。前のワンコの12年間で、散歩のときの細かいルールをいろいろ工夫して、ワンコにもやりやすいように改良しながら決めていったものがあって、今のワンコのときは最初からそれに従ってやっていったので、今のワンコには前のワンコよりずっと負担をかけずに済んだと思う。やり方をいろいろ替えると、ワンコは混乱する、っていうのは言われるよね。それはわかっていても、うまく行かなければ替えざるを得ないわけで。それでも何とか対応してくれた前のワンコは、それなりに偉かったなー、と今ならw思う。


 今のワンコは、うんと小さくてうちに来たってこともあり(7週齢になるより前だった)、最初は外への散歩はなしだった。ワクチンとか済んで、初めての散歩のとき、前のワンコはすでに散歩の楽しさを充分以上に知ってたから問題なかったけど、今のワンコは歩くことに尻込みした。それを見て、つくづく性格違うなーってことと、これは厳しくしたら散歩が楽しくないと思ってしまうだろうなと思って、最初から引っ張らないで散歩させた。

 犬のペースに合わせて歩く。立ち止まって匂いを嗅ぎたければ飽きるまで嗅がせる。もちろん、人が来たり車が来たりしたらよけなきゃいけないけど、そのときも、緩く引くだけで従ってくれるようになった。

 それでも、今のワンコは散歩が楽しいというふうにはなかなか思ってくれなかった。そもそも、前のワンコはひたすらテンションを下げる下げる下げる、ということに腐心する一日だったので、私は犬のテンションの上げ方を知らんかったw 前のワンコは指一本ヒュッと動かすだけでテンション上がってたもんなーw ボール遊びとか引っ張りっことかしてやると、ある程度は遊ぶんだけど、前のワンコと比べたら10分の1くらいの感じ。楽でいいけど……いいのか? と悩んだりもした。

 でもまあ病気とかでないなら、それでもいいか、ってかそのほうがこっちも楽だしー。むしろ前のワンコが大変すぎたわけでw またオカルトめくけど、今のワンコがうちに来た日、しばらく様子を見て、でも一日飛行機に乗ってきたわけだから疲れててコテッと寝ちゃって、寝室の窓の下、その壁の向こうには一年ほど前に死んだ前のワンコが埋まってるんだよ……ってところでしばらく眠ってから起きてきたときの私への態度が、前のワンコが乗り移ったかな? と思ったんだよね。眠る前は、初対面の私に警戒してたのが、さっぱりなくなってたから。

 それからも、前のワンコがいろいろ教えてるでしょ? って思うことはいくらもあったw まあその辺は本気で信じているわけではなくて、そう考えたほうが楽しいからって程度だけど。


 で、今のワンコは散歩と言っても特に楽しいわけでもない、という感じだったので(前のワンコは、散歩の気配を感じただけではしゃいでくるくる回って踊り、違うよ、あんたは留守番だよと言うと、一瞬でしょぼーんとうなだれて上目づかいに恨めし気にこっちを見る、そのくらいわかりやすかったw)、洗濯紐のロングリードで歩く範囲を広くしてやったら、今は楽しいらしい。時間になってもこっちが動かないと催促してくる。朝は人も犬も少ないからロングリードなんだけど、晩は犬や子供が遊んでいることもあるから普通のリードで、それでも文句を言うでもなく引っ張ることもなく普通に歩く。まあ、留守番とわかっても、前のワンコほどショボーンとはしないけどw

 ま、今のワンコはやっと2歳だし、これから大人になって、もっといろんなことがわかるようになって、性格も形成されていく部分はあるんだろうな。ニャンコニャンタが来たりしたことでも、少し変わった部分はあるだろうし。


 やっぱりこれは犬のもともとの性格によるところが大きいんだろうけど、今のワンコに、前のワンコを踏襲しての私の今のやり方がマッチしてくれたってことなのかな。たまに散歩してると、どうやってしつけたの? と訊かれることがあるんだけど……ほとんどしつけてないんです、としか答えられない。私が引っ張らないように気を付けていたら、ワンコのほうも引っ張らないよう気を付けるようになった、としか。

 この方法が他の犬でも通用するのかどうか……。こういうこと書いてると、犬についてもっともっと経験を積みたいと思ってしまうんだけど……ま、現状無理w いずれ今のワンコを交配させて仔犬が生まれたら(一回しかやらないと思うけど)、一匹はうちで飼う!とダンナが言ってるので、もう一頭は実践する機会があるかも。その犬は、今のワンコの娘だとしても、性格的にどうなのか、今のワンコに近いのか、前のワンコとの中間なのか。今のワンコが楽すぎるので、これよりは手がかかると思っておいたほうがよさそうw


 今日の一枚。

DSC01190

 ニャンコとワンコとニャンタ、縦列就寝中。